滑稽本手控え

Kokkeibon book note

江戸時代に創作された滑稽本(町人の日常生活におけるおかしさを書いたようなもの)の意訳をしたときのメモです。

# 項目 内容
1 日本橋 【日本橋より品川へ二里】から始まります。
東海道等の起点である日本橋(東京)から物語が始まることを単に宣言したのでしょう。
江戸の人にとっては、日本橋より品川行くことは、それこそ庭を歩いて行くくらいだったのでしょうか?
この品川までにもいろいろありそうのですが、ここでは、特に何もなく品川へ行ってしまいます。
旅立った時間も明確には書かれていません。
ちなみに、1里は約4キロメートルです。
2 狂詩(きょうし) 七言絶句などの漢詩の形式です。本文は以下の通り。表現が難しいです。

雖非亡命可奈何              借金不報擇尻過
夫居本貫掛乞衆              將是川向成于戈

かけおちにあらずといえどもいかんがすべき しゃっきんはらはずしりをはしょってすぐ
そこにござれえどのかけとりしゅ      まさにこれかはむかひのけんくわなるべし
3 おはようございやす この「おはようございやす(お早くお着きになりましたね、の意)」という言葉は、現代の「おはよう」とは異なり、時間帯を問わず使われる「いらっしゃいませ」や「ようこそ」にあたる歓迎の挨拶です。
これは単に時間の早さを指すのではなく、「無事に、順調に到着されましたね」という旅路の安全を祝うねぎらいのニュアンスが含まれています。
店側としては「江戸からここまで、あっという間に着かれましたね!」という威勢のいい歓迎の意味を込めていたと考えられます。
4 九紋龍 中国の小説『水滸伝』の登場人物であり、歌舞伎や浮世絵の世界でも非常に人気のあるキャラクターです。
5 葭町(よしてう)しんみち いわゆる吉原のことです。
吉原には、新吉原と元吉原があり、葭町(よしてう)とは元吉原のことです。
ここには「陰間茶屋(かげまぢゃや)」、男色が集まっていたようです。
そして、北八の過去を揶揄しているのかもしれません。
6 馬方と馬子(まご) 馬方と馬子が出てきますが、どちらも馬を扱って人や荷物を運ぶ職業のことです。
馬方…運送業に携わる人全般を指す。
馬子…実際に馬の手綱を引いて歩く現場の人を指す。
使い分けが難しいので、ここでは、「馬子」に統一します。
7 じば 当時もいわゆる業界用語があったようです。
ここでの「じば」は、二百を表す隠語となっています。
当然、二以外の数字を表す隠語もあったと思われます。
本当のところはわかりませんが。
8 上(かみ)の宿の房州 江戸時代、京都に近い側を「上(かみ)」、江戸に近い側を「下(しも)」と呼ぶのが一般的です。
房州は、現在の千葉県南部のことで、「房州出身のあいつ」という感じでしょうか。
つまり、ここより上(かみ)の宿の房州(出身のあいつ)ってかんじですかね。
9 一里九丁 一里は三十六町(丁)ですから、これは、一里と四分の一里です。
約5キロですね。
10 阿房上総(あはかづさ) 気象条件さえ揃えば、実際に神奈川宿から対岸の房総半島を目視することは十分に可能だったみたいです。
まあ、ここでは、実際に見えたということよりも、この茶屋の奥は見通しが良すぎて安房までつながっている。
どこまで行っても阿房(阿呆)だ。とでも洒落たかったのかもしれません。
11 ござつた目もと ふつうなら、「ありました」となるところです。
でも、それでは意味が通じません。
調べて見ると、「以前どこかで会った(=時間が経っている)」という俗語があって「鮮度が落ちている(古い)」と皮肉るような表現のようです。
つまり、あたかも知人に再会したかのように「久しぶり(に会ったので、時間が経っていて鮮度も落ちて古くなっている)の目つき」という感じでしょうか。
12 千手観音の利生 唐突に、千手観音が出てくるのですが、シラミの俗称だとわかると、この当時の様子がわかります。
まさに千手観音なみに痒かったのでしょう。
13 天窓(あたま) 狂歌の中に使われているので意味がわかりにくいです。
天窓と書いて「あたま」とルビがふってありますが、そう読んでいたみたいです。
たぶん、月代(成人男性の髪型で、前頭部から頭頂部にかけて頭髪を剃りあげた部分)がそう見たのではというのをみつけました。
ただ、この歌であたまと解釈するとしっくり来ません。
ここでは、あたまを使うとか知恵を絞るとかいう意味でのあたまなのでしょう。
14 腹がきた山 腹がきたは、「腹が減ってきた」だそうです。
そうだとわかってしまえばそうなんでしょうが、これはなかなかわからない。
ましてや「山」は、何でしょう。
なんと、具合や頃合いをさす俗語的な添え言葉だそうでうす。
腹がきた山は、「腹が減ったぞ。」にしてみました。
15 地にした 地は、地面ということでぐらつかない確かな場所に、あるいは、確かな状態に落ち着くということです。
ざわついた状態が地面のように落ち着いたところでしょうか。
「イヤこれで地(ぢ)にした。もふ安堵(あんど)してねよふか」
「いや、これでいい。安心して寝られる。」というところでしょうか。
16 おじやれか無洒落(ぶじやれ)か 「おじやれ」は、「おしゃれ(洒落・しゃれ)」のこと。
「無洒落(ぶじゃれ)」は「おしゃれ」との対比です。
省略しました。
17 湯本の宿 東海道にあった宿と宿の間にある村を「間(あい)の村」といい、間の村の中で、馬を継ぎ立てたり、人足や駕籠かきなどが休息する場所を「立場(たてば)」といった。
小田原・箱根間の立場にひとつです。
なので、これは、湯本の立場です。